ろう・難聴の子どもたちの学びを守るために
~これまでの歩み、そしてこれから~
パネラー
武居 渡 (金沢大学 人間社会研究域 学校教育系 教授)
中澤 操 (秋田県立リハビリテーション・精神医療センター耳鼻咽喉科医)
前田 浩 (大阪ろう就労支援センター 理事長)
司 会
松本 大輔 (全国聴覚障害教職員協議会 会長)
ろう学校における幼児児童生徒の数は年々減少している状況が全国的に広がっています。少子化の影響もありますが、インクルーシブ教育の理念の広がりとともに、子どもや保護者の学校選択肢が増えたことも一因と考えられます。見方を変えれば、子どもや保護者の学校選択肢からろう学校が除外されつつあることを意味し、かつ、ろう・難聴の子どもたちのコミュニティの継続に関わる重大な問題でもあります。果たして、ろう学校はろう・難聴の子どもたちにとって、魅力のある学校になっているのでしょうか。私たち、ろう・難聴教職員の担う役割は何でしょうか。
私たちを取り巻く環境や社会も変化しています。障害者差別禁止法によって合理的配慮を求めやすくなり、教務主任や学部主事、管理職といった重責な職務を担うろう・難聴教職員も増えてきました。その一方で、ろう学校以外の教育現場で働くろう・難聴教職員の割合が増しており、今後もそのような傾向は続くであろうと推測されます。ろう・難聴教職員が配置される教育現場において、より働きやすい職場環境にしていくためには、当事者自身が周囲の理解を広げたり人間関係や協力体制を築いたりすることに労力を費やさなければならないでしょう。
1994年の夏にここ松島にて、先輩方は希望をもって全聴教を立ち上げました。あれから30年の年月が流れ、ろう・難聴の子どもたちの実態や家庭環境の変化、ろう教育の現場における専門性の維持と働き方改革の推進など、ろう教育の現場を取り巻く社会や環境も劇的に変化しています。それでも、目前のトピックにとらわれることなく、変わらぬもの(不易)を再発見することで、新たな道を見出すことができるかもしれません。
さぁ、私たちと共に見つめ、考え、そして、語らいましょう!