第1分科会
デフフッドの視点を踏まえた授業実践
~ろう・ろう重複児の豊かな学びを目指して~
助言者
松 﨑 丈 (国立大学法人 宮城教育大学 教授)
座 長
戸 田 康之 (埼玉県立特別支援学校大宮ろう学園 教諭)
佐々木 寿子 (秋田県立聴覚支援学校 教諭)
デフフッド(Deafhood)とは何か。宮城教育大学の教授である松﨑丈先生によれば、マジョリティ(聴者)社会の中で、マイノリティ(ろう者)として生きていく上で、自分はどうあるべきか探求(自分探し)をしていく過程のことを指しています。 ろう学校では、小学校や中学校及び高等学校の学習指導要領に準じた教育を行う教育課程を履修することになっています。しかし、当然ながら、それらの教育課程や教科書はマジョリティ(聴者)の視点で編纂されており、ろう者として生きていくための“学びにつながる”言葉や歴史、文化、情報などは皆無に近い状態です。それどころか、福祉や人権の視点から手話や障害者を取り上げられることがほとんどです。また、教科書だけではなく、ろう学校における生活様式や指導内容等も、聴者視点で形成されていることが多くあります。
松﨑先生よりレクチャーを受けた上で、グループワークと各グループの発表を行います。そして、意見交換・情報交換を行うことで、ろう児やろう重複児の豊かな学びを支える見識をさらに深めていきましょう。
※ 第1分科会は 手話を使った教科指導を取り上げて行いますので、あえて情報保障はつけないことをご了承ください。
第2分科会
ひとりひとりの命が輝く学校とは
~窮屈な職場を変えるためのヒント~
助言者
坂本 久美 (人の輪と心を育むひまわり教室 主宰)
座 長
羽生 薫 (宮城県立支援学校女川高等学園 教諭)
新垣 聖子 (沖縄県宜野湾市立真志喜中学校 教諭)
2024年4月に「改正障害者差別解消法」が施行され、合理的配慮の提供は全ての学校で義務となりました。しかし、ろう・難聴教職員にとっての職場環境はどうあるべきか、これまでと何が変わるのか・・・疑問や悩みはつきません。そこで、いつも児童生徒を中心に奮闘している私たちろう・難聴教職員の働き方、輝く命についてスポットをあてて考えてみませんか。子どもたちがのびのびと学校生活を送るためには、私たち教職員が笑顔でやる気を失うことなく、命輝く限り、望ましい教育が成り立つのではないでしょうか。
職務環境が多様化している今、情報保障という視点のみならず、ひとりひとりの教職員が輝くためにどうしたらいいのか、日々の悩みを打ち明けてみませんか。自分自身をみつめ直す機会です。
前半は、アイスブレイクを通して心をほぐした後、KJ法で悩みや解決方法を共有(アナログ式・ICT 式)後半は、座長の話題提供のあと、ポスターセッションによる事例からみんなで考えを共有し、助言者から講評をいただき、ひとりひとりが主役として輝く分科会を目指します。
第3分科会
きこえない・きこえにくい乳幼児・幼児とその保護者への支援のために
~障がい認識、コミュニケーション支援を中心に~
助言者
武 居 渡 (国立大学法人 金沢大学 教授)
座 長
小佐野 貴恵 (山梨県立ろう学校 教諭)
川 畑 賢司 (埼玉県立特別支援学校坂戸ろう学園 教諭)
人工内耳の普及だけでなく、保護者の共働きの増加により地域の保育園や幼稚園に通う乳幼児、幼児が増加し、ろう学校の在籍数が減少傾向にあります。また、ろう学校幼稚部に在籍しているものの、送迎サービスを利用する等、保護者と話をする機会がなかなかとれないという例もあります。そのため、保護者の障がい認識、コミュニケーションの支援が十分にできないという状況が生じています。
ろう学校における現状や、特別支援学校坂戸ろう学園の保護者支援の取り組みを知り、その上で、私たちにできる支援方法について一緒に考えていきませんか。早期支援、幼児教育にかかわっている方々はもちろん、早期支援について聞いてみたい、きちんと知りたい、当事者として話してみたい方もぜひご参加ください。
※参加申込者には、事前に早期支援についてアンケートのご協力をお願いいたします
第4分科会
卒業後、自分らしく、心豊かに生活するために、今できることとは?
~学校と寄宿舎との連携、取り組みについて~
助言者
木村 美津子 (筑波大学附属聴覚特別支援学校 寄宿舎主任指導員)
座 長
松山 智 (東京都立葛飾ろう学校 教諭)
小川 雅 容 (栃木県立聾学校 寄宿舎指導員)
ろう・難聴の子どもたちが、卒業後、自分らしく、心豊かに生活していくためには、自分の課題や地域社会との関わりに気付き、他者と協働しながら解決していく力が必要となります。具体的な要素として、例えば、自分を知る、困り感に気付く、他者に働きかける力といった問題解決力やコミュニケーションスキル等が挙げられます。
前半では、実際に教育現場に携わっている教職員より、レポート発表を行います。後半では、ろう・難聴の子どもたちが、自己肯定感を高め、自分らしく生活していくために、私たちろう難聴教職員がこれまでに行ったこと、今実行していることを、参加者で共有しましょう。
そして、学校や寄宿舎の中で、私たちができる指導・支援の在り方はどうあるべきか、一緒に考えていきましょう。
第5分科会
夢を追い求めたろう教育の先達に学び、明日につなごう
~ろう教育と手話の歴史と先人たちの志を知り、今日の教育現場を考えよう~
講 師
前田 浩 (大阪ろう就労支援センター理事長、全国聴覚障害教職員協議会初代会長)
司 会
中村 孔一 (福島県立聴覚支援学校平校 教諭)
1878(明治11)年、古河太四郎によって京都盲唖院が設⽴されました。これにて我が国の聾教育が始まり、東京、函館、⻑崎、拾⽯(現、豊橋聾学校)、⼤阪と相次いで設⽴された聾学校(当時は盲唖院・訓盲院と呼称)は、ろう者コミュニティと⾔語としての⼿話を⽣み出しました。
今⽇のろう者の⽣活⽂化の広がりや社会参加への道は、これら聾教育機関を⽣み出し発展させた先⼈、またろう者当事者たちによって切り拓かれてきました。この講座では、彼らの⾜跡をたどりながら1 世紀半を経た今⽇の地点に⽴って、ろう教育現場の⼿話と⽇本語習得をめぐる課題、⼦どもたちの多様化、ろう学校によせるニーズと社会的期待をめぐって⾃由に意⾒交換しましょう。
本会、全聴教はこの宮城県松島にて30年前に結成されましたが、当時の教員たちは⼿話導⼊と⽇本語教育に関する視点と⽅法論に悩み、研究協議してきました。それは今⽇も古くてなお新しい教育テーマであり、私たちはろう学校の魅⼒や専⾨性のあり⽅を問い直し、⼦どもたちの集団(コミュニティ)を守り保っていくために、過去と現在、現在と未来を⾏き来しながら共に考えましょう。