ブックタイトル365日のワークシート

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365日のワークシート

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概要

365日のワークシート

このような立脚理念は、15年経過した今日にあってなお変わっていない。今回、本書を編集するにあたってのスタンスは、日本語の世界とその文化のゆたかさを子どもたちに伝えていく、そのための教材を全国のきこえない教職員から広く集め、活気に満ちた指導のあり方を提供することであった。同時に、手話言語を学び、将来、地域や職場で他者に伝えていくための知識、技能をどのようなワークシートで伸ばしていくかに、意を払った。きこえない・きこえにくいことが子どもの学習上の不利益に結びつかないように創意工夫をこらしたところに、きこえない教職員たちがその総力をかけたアドバンテージがある。本書のもう一つの特徴は、手話の教育に関する知見と実践をワークシートに反映させたことである。その根底には、言語であるからには、日本語が国語科等を通して系統的に学習されていくのと同等に、手話の教育にも子どもの手話力にみあった教材と計画性のある指導がなければならないという私たちの認識があった。そうしたねらいから、手話イラストをふんだんに掲載させ、手指や腕の動き、その位置と向き等の描出に工夫を凝らしたが、課題として残された部分もある。さらに、「障害認識」の領域にも踏みこんだ。かつての聴覚障害教育は、社会参加という目標のもと、聴覚活用や口話力を伸ばすための過酷なまでの努力を子どもたちに強いてきた。また、きこえない人のあるがままの生活と手話が受けいれられず、きこえの障害が病理学的視点でとらえられてきた負の歴史もあった。しかし、今日、きこえない子どもたちが手話をしっかりと学び、多様な人間関係を組み立てていく力をはぐくむ教育の重要性が実践の中から明らかにされている。発達早期から障害に気づき、手話・日本語に関する言語意識を獲得していくことが重要であり、周りの人々に理解と協力を呼びかけていく中で、子どもたちはポテンシャルとしての生きる力を体得していくのである。障害認識にかかわる具体的な教材や指導法をワークシートにした類書にない試みには、今後のさらなる検証作業と実践の蓄積が加えられねばならないであろう。本書は、京都盲唖院開校以来の130年におよぶ聴覚障害教育史につらなるささやかな実践の記録である。きこえない子らの言語獲得と社会参加をねがい、それこそ身を挺してこられた先人と、名もなき教育者たちの情熱、聴覚障害者の生活と社会的地位の向上に尽くされた方々の勇気に励まされながら、私たちはようやく本書の発行にたどり着くことができた。深い感謝と畏敬の念をいだきつつ、これらの方々の霊前に本書をささげる。